Cay Tre

2007年12月17日、旦那と私はロンドンにあるヴェトナム・レストラン「カイ・トレ」にて夕食を食べた。まえまえから是非行きたいと思っていたので、たまたまロンドンに行く用ができた機会を捉えて、1週間前から予約を入れ、楽しみにしていた。このレストランのことを知ったのは、新聞タイムスの土曜日版にはさまれて来る雑誌にレビューが載ったから。住所を控えて、いつか機会が来るのを待っていたのだ。
場所は、ツーリストが普通に来る場所ではないものの、地下鉄のゾーン2の中にあり、私たちのようにロンドンに馴れない人でも簡単に来ることができる。Old Street駅からは歩いて5分以内。詳しい行き方はお店のホームページに説明があるので、私たちはそれを辿って行った。

私たちが到着したのは6時40分ごろと、夕食にはちょっと早い時間であったにも拘らず、一階部分は、2人がけのテーブル二つを残してほぼ満席。地下にもテーブルがあるようなのだが、降りていかなかったので、どれぐらいのスペースがあるのかは分からない。お客さんの大半は20歳から30歳までの若い人たち。それより年代が上の人も何人かいたが、その人たちは常連さんらしく、店の人たちと親しげな様子だった。
ウエートレスさんは、私たちを入り口近くの席に座らせようとしたが、予約があることを告げると、ちょっと奥の方にある席に換えてくれた。しかし、予約のことをあまり気にしている様子はなく、どれぐらい気をつけて席を確保しておいてくれるのかちょっと不安な気がする。

私はここに来る前から、メニューをダウンロードして読み、何が食べたいか大体決めていた。メニューにはいろいろ変わった料理が載っているのだが、ベトナム・レストランに来た以上、生春巻きを食べないわけには行かない。という訳で、とりあえずゴイ・クオン(写真左、二本で2.90ポンド)を頼んだ。飲み物は、ジャスミン・ティー(一人分£1)。普通の湯飲みではなく、小さなコーヒーカップのようなものを渡された。ベトナムは、フランスの植民地だった際、さまざまな影響を受けている。たとえば、アジア地区でもっとも美味しいフレンチ・バゲットを作るのはベトナムだといわれている。このコーヒーカップ風湯飲みも、植民地時代に受けた文化的影響の名残なのかもしれない。
話を元に戻してゴイ・クオン。中には海老の他、レタス、香草(特にミントの香りが強かった)がぎっしり入っていて、それをピーナッツの入った味噌につけて食べる。作り起きを冷蔵庫の中に入れているらしく、とても冷たい。味はまあおいしいのだが、海老の味があまり感じられないのが欠点。

旦那は生姜と生のコリアンダーが嫌い(それ何のなぜ、ベトナム料理を食べに来るかと言えば、私が無理やり連れてきているから)なので、ウエイトレスさんに、それらが入っていないのはどれかを質問。彼女のサジェスチョンは、スターターの中から選べば、生姜は入っていないというものだった(結果的に分かったことなのだが、この店では生のコリアンダーはあまり使わないらしい)。スターターの中にはメインと同じぐらいの金額のものがいくつかあったので、それなら量も多いだろうと、旦那はその中から一つ選んだ。
それがこのムン・ニョイ・ティット(「カンガルー烏賊」というニックネームがついている)(£6)。メニューに書いてある説明によれば、烏賊にきくらげ、星海老の粉、豚のひき肉を詰めたものとのこと。詰め物をされた烏賊は油で揚げられており、炒めた玉ねぎ、ネギ(スプリング・オニオン)、生のレッド・チリを輪切りにしたものがのせてある。見た目はまあまあだが、かなり美味しい。さっぱりした烏賊としっかり味のついた豚肉のコンビネーションは絶妙で、いためた野菜と一緒に食べるとさらに旨みが増す。新たな味の発見だった。

旦那は、何を頼んでいいか分からないと言うので、あとは私が注文。ベトナム料理として外すことができないもう一つの料理は「フォー」。特に食べたかったわけではないのだが、味のチェックのため注文してみた。スターター・サイズとメイン・サイズ(それぞれ、£3.50と£5.50)があり、肉は牛肉か鶏肉のどちらかを選べるようになっている。私が選んだのは、スターターサイズの牛肉フォー。がっかりしたのは、期待していた平たくて薄い麺が使われておらず、断面が正方形の細い麺が使われていたこと。それでも美味しい麺ならよかったのだが、腰のない、頼り無い食感。しかし、クリアなスープはダシがよく出ていて美味しかった。

メイン・ディッシュは、魚の中ならどれがいいかとウエイトレスさんに聞いてみる。彼女が薦めたのは、マリネし、オーブンで焼いた鯖、アンコウ料理(調理法はチェックするのを忘れた)、そして、ナマズ料理だった。鯖はありふれているし、イギリスのアンコウは値段の割りにあまり美味しくないので、食べたことのないナマズ、「カ・コー・ト(£7)」を注文する。 メニューの説明によれば「伝統的なヴェトナムの調理法。淡水ナマズをカラメル状にした魚のソースでポーチし、土鍋で煮た後、砕いた黒胡椒と刻んだフィレッシュ・チリで仕上げたもの」だそうだ。
この料理は、左のような土鍋で運ばれて来る。下の皿には液体燃料が広げてあり、ウエートレスさんがこれに火をつける。やたらに暗い店内で青い炎が美しい。この火が静まった頃にウエートレスさんがもう一度やって来て、蓋を取ってくれる。

蓋を開けると、ソースがぐつぐつ煮立っていた。見た目は美しくないかもしれないが、これはこの日に食べた料理の中で一番美味しかった。ナマズは銀ダラと鯉を混ぜたような味で、かなり脂が乗っており、淡水魚独特の泥っぽい臭いがある。それが嫌いな人は嫌かもしれないが、うなぎを食べ慣れている日本人には気にならないであろう。ソースはカレーのように見えるが、どちらかと言うと味噌に近い味で、これもまた日本人には馴染みやすい。これはもちろんご飯と一緒に食べる。私たちはジャスミン・ライスを注文してあったのだが、これはタイのパサパサしたジャスミン・ライスとは違い、もち米のような弾力のあるご飯だった。ピリ辛のソースをこのご飯にかけながら、全部食べ終えた。
サービスはテキパキしていて素早い。しかし、かなりぶっきら棒で、愛想のない中華の店と同じような感じ。まあ、このやり方に馴れている人は気にならないであろう。
以上、全部合わせて£26ポンド程度(10%のサービス料自動加算)。お酒を飲んでいないとは言え、かなり安いと思った。料理が美味しかったのでなおさらである。ロンドンに行く機会が合ったら、是非また訪れたい店である。
Cay Tre the Vietnamese Kitchen
301 Old Street, London, EC1V 9LA
Tel: 020 7729 8662
Fax: 020 7739 5298


